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PSG・SSG時代の工夫

PSG・SSGとは、単一の音色しか出せない昔のパソコン及び家庭用ゲーム機(ファミコンとか)の音源の事です。

パソコンの方は一足先にシンセサイザーの一種であるFM音源を搭載し、様々な人工的な音色で演奏できるようになりましたが。

さて、この単一の音色しか出せず、しかも同時に出せるのは3音のみ(正確にはそれにプラスしてノイズが1チャンネル)。
この限られた貧弱な仕様で、今のゲームなんぞ遥かに適わないプレイヤーの印象に強く残るBGMを鳴らしていたわけです。

たった3音で音楽を奏でるという難しさ、作曲家の苦労も大変なものだったでしょう。
しかしプログラムの方でもいろいろ工夫がされ、少しでも綺麗に聞こえるような、あるいはリアルに聞こえるような工夫がされていました。

代表的な技術をいくつか紹介しましょう。

・エコー
シンセサイザやレコーディングスタジオで曲をCDにする場合などは、音の奥行きを出すためのリバーブ・コーラス・ディレイなどを専用に再現する機械があります。
しかしそんな高度な機能は当時のPSG・SSG音源にはありません。
有名なファイナルファンタジーⅡのファミコン版のメインフィールドの音楽を聴いてみてください。
すごくエコーがかかって音が響いていますね。
あれ、どうやって出してるかというと、2チャンネル使って音を重ねて出してるんです。
エコーというのは、基本的に壁などの障害物に当たって跳ね返ってきた音が元の音と重なって聞こえる現象です。
音は跳ね返る時に少し波形が弱まります。
元の音より少し周波数(音の高さ)が下がり、なおかつ音量も下がります。
つまりある音に、その音より少し低い(これは音が1音下がるのよりもっと微妙な周波数単位での差で人間の耳でかろうじて判別できるレベルのもの)音をワンテンポ遅れて元の音の5割~8割り程度の音量で重ねて鳴らすのです。
そうすると、お風呂場で歌を歌った時の様なエコーの掛かった音になります。
更に元の音やエコー音を微妙に揺らす、いわゆるビブラートを掛けてやると、もっとリアルで綺麗なエコー効果が出せます。
これがFFⅡのフィールドBGMのあの綺麗なメロディー音の正体です。
なおこのビブラートを掛ける事でPSG・SSGでも綺麗な音が出せる事が最もよく分かる曲として、PC88時代のファルコムのイースⅡの最初の街のBGMがあります。
FM音源搭載機種であるにも関わらず、メインのメロディーラインはSSGの演奏されています。
このメインメロディーのミファソラー~~の「~~」の部分、これがビブラートです。
すぐにビブラートを掛けるのではなく、少し伸ばしてから揺らします。
これは歌の上手い人なんかも使う技ですね。
演歌歌手とかものすごく極端に揺らしますが、あの「あー~~~」というのには「より歌声が綺麗に聞こえる」からやってるんです。

・ドラム音
PSG・SSGのような単一音色しか出せない音源でもドラムっぽい音は出せます。
ドラム音というのも、音である以上、普通の楽器の音と同じように音の高さが存在します。
ドラム音が他の楽器音と違うのは、音の周波数が一定の高さで安定せず、瞬時に下がる事です。
従ってものすごい速さで周波数を下げながら短い音を出すと、ドラム音っぽくなります。
更にノイズを重ねたりする事で、スネアドラムっぽい音にもなったりします。
ファミコンなどはドラム音は単にノイズ音を短く出す事で再現してるものが多かったですが、パソコンではノイズ音に頼らずこの方法でよりドラムっぽい音を出してたりしました。

ちなみに音色が自分である程度作れるFM音源なんかでドラム音を作る場合も、同じく短い時間で周波数が下がるような細工をしています。
パソコンゲームでBGMに定評のあったファルコムなどが、FM音源ドラムをよく使ってました。
FM音源が進化して、ステレオになり、PCMのドラム音が搭載されてもわざわざFM音源で作ったドラム音を使ってたぐらい、特徴のあるよく出来たドラム音でした。
一連のFM音源時代のファルコムのゲームのBGMを聞いてみれば分かります。


このように昔のゲーム製作者はBGMひとつとっても、非常に創意工夫に富み技術を駆使していました。
今のゲーム企業につめの垢を煎じて飲ませてやりたいぐらいです。
どんな音の波形でも理論上再現できるPCM音源が当たり前の今の時代に、こんなこと知ってたって何の役にも立たないと思われるでしょう。
しかし、「原理」を知っているのと知らないのでは、コンピュータを使って音楽を奏でる時にものすごい差が出ます。
ピアノを弾いた事ない人がコンピュータに打ち込んだ自動演奏ピアノ曲と、ピアノを実際に弾ける人が打ち込んだ曲とではリアルさが全然違うのと同じです。

もしこの先、コンピュータゲームで食っていこうと思ってる人が居たら、ぜひとも昔のゲームのプログラムにどんな技術が使われていたか、どんな工夫があったのかを勉強してみてください。
開発言語のコマンドを覚えるより、遥かに役に立つはずです。

大学は文系だったけど、趣味でゲームの改造をしていた新人が1ヶ月もしないで1人前のプログラマになったに対して、コンピュータプログラムの専門学校を出ましたとか、理系学部の大卒新入社員は半年~1年教育しないと使い物にならないというのを見てきています。

どれだけ深い所まで知っているかが、プログラマとして役に立つかどうかの大きな差になるという事を、現在のスマホだのブラゲだのしか作れないやつ等は覚えておいて下さい。


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